住まいのレポート~夫婦で借りる住宅ローン
2023年05月22日
夫婦で借りる住宅ローン
夫婦で協力して住宅ローンを借りる方が増えています。1人で借りる場合よりも約5割(年収額によります)借入額を増やせるというメリットがある一方で、リスクもあります。ここでは、「ペアローン」、「連帯債務型」、「連帯保証型」という商品についてお知らせします。
借入額増やせるメリットがあるものの破綻懸念も
夫婦でローンを組む需要が増えた背景には、共働き世帯が増えて、2022年現在専業主婦世帯の約2.3倍の1260万世帯となっており、住宅費用も夫婦で均等に負担するという意識が進んだ事があります。
前述のように「ペアローン」等では単独ローンより借入額を増やせるというメリットがあります。一般的に単独では年収の7倍程度の借入が可能ですが、近年の住宅価格の高騰もあり、首都圏を中心とした物件では単独の収入だけでは希望借入金額に届かないケースが多くなっています。そこで単独では届かない物件を夫婦(の年収)で協力して返済していくことで購入が可能になります。
一見理想的にも思えますが、現在の夫婦の年収だけを考慮してローンを借りた場合、契約後に妻の出産や育児の期間に減収になったり、離職せざるを得なくなったりする等により返済が滞ってしまう恐れがあります。住宅ローン返済は長いと35年にもなります。夫婦が協力して返済していくなら、夫婦それぞれの考えられるリスク、ライフプランやキャリアプランを考慮に入れて、多少の減収があっても持ちこたえられる借入額に抑えることが大切です。
「ペアローン」
共働き世帯等で夫婦が1つずつ、計2つのローンを借りる方法で、夫婦それぞれが「債務者」となって、夫は妻、妻は夫のローンの「連帯保証人」になります。二人分の収入を前提に借りるので一人より借入額が増えます。
また夫婦が別々にローンを組むので、それぞれが借入金額、金利タイプ、返済期間を自由に決められます。将来のライフプランを考慮して、一人が借入金額を多めにして35年返済で固定型、もう一人が金額を少なくして20年返済の変動型といったように、期間が短い方を変動型にすれば金利上昇リスクを抑えやすくなります。もちろん二人とも同じ内容にしても構いません(年収によって同じ金額に出来ない場合もあります)。
「ペアローン」は単独での借入に比べて手数料が高くなることもありますが、リスク管理の費用としては高くないと思います。
前回のブログ(金利タイプ別住宅ローン)でも記載しましたが、金利タイプによって返済する金額は変わります。将来の金利を予測するのは困難ですが、仮に金利が上昇しても返済が進んでいれば変動型でも影響は少なくなります。こうしたミックス型の「ペアローン」を選択することで、リスク回避が可能になります(ミックス型の「ペアローン」は取り扱いのない金融機関もあります)。
また二人とも住宅ローン控除を利用でき、所得税や住民税の節税も二人ともに可能です。
「連帯債務型」
「連帯債務型」とは、夫婦や親子などの収入を合算して住宅ローンの借入を行う事です。住宅ローンを申込んだ方一人の収入では希望する金額を借りられないときなどに、「連帯債務型」にすることで借入金額を増やすことが出来ます。
「連帯債務型」では片方が「主債務者」、他方が「連帯債務者」となり、「主債務者」がローンを返済できなくなったときは「連帯債務者」も住宅ローンの債務を負います。
住宅ローン控除は、「主債務者」だけでなく「連帯債務者」も受けられます。所得税や住民税の節税も二人ともに可能です。
「連帯保証型」
「連帯保証型」とは「連帯債務型」と同様に夫婦や親子などの収入を合算して住宅ローンの借入を行う事ですが、片方が「主債務者」、他方が「連帯保証人」となり、「主債務者」がローンを返済できなくなったときは、「連帯保証人」に返済義務が生じます。
住宅ローン控除と節税は、「主債務者」だけで「連帯保証人」は受けることが出来ません。
団体信用生命保険にも注意を
夫婦で住宅ローンを借りる時はどちらかが返済中に亡くなる万一の事態にも備えておきましょう。夫婦いずれかの死亡時にローンに付いている一般的な団体信用生命保険(以下団信)だけで残債がゼロになるとは限りません。
「ペアローン」では二人とも団信に加入できますが、1人に万一のことが起こった場合、債務免除は1人分のみで、もう片方の返済義務は継続されます。
「連帯債務型」では団信は「主債務者」のみしか加入できない場合があります。「連帯債務者」が加入できない場合は返済義務が免除されませんので、返済に不安がある場合は、万一に備えて他の生命保険に加入するなどの準備が必要になるでしょう。「主債務者」・「連帯債務者」共に加入できる団信を取り扱っている金融機関もあります。
「連帯保証型」では団信は「主債務者」のみしか加入できません。
夫婦で借りる住宅ローンのまとめ
夫婦で住宅ローンを組むには、「ペアローン」、「連帯債務型」、「連帯保証型」とありますが、個人的には「ペアローン」と「連帯債務型」はお二人それぞれが納税している世帯に適しており、「連帯保証型」は片方が扶養に入っている世帯に適していると思います。それぞれの特徴を理解して選択しましょう。
共通して言えるのは、夫婦の収入を合算することで借入金額を増やして、希望の物件を購入することが可能になる事です。しかし借入を増やすという事はリスクも増えるという事です。無理な借入をしないことを心掛けましょう。
また、万一の時に団信でカバー出来ずに残債が残り、返済不安の可能性がある場合は、団信とは別に通常の生命保険を契約することも必要です。団信は金融機関によって保障パターンが異なるので、よく確認して生命保険とのバランスも考慮しておきましょう。